つくよみの…

あの美しさを何て表現すればいいのだろう?
実家に帰る夜行バスの中で、寝付けなくてふと窓の外を見た。
怪しげに光って棚引く雲の向こうに在ったのは、満月には少し足りない月だった。
走る車と共に移り変わる景色の遥か彼方で、変わらない月の光に彩られたさまざまの形をした黒雲が、流れ去っていった。
確な闇の中で、そこだけが不思議に色付いていた。不確かな視界の中では、月の輪郭もぼやけていたが、その輝きだけははっきりと鮮やかに眼に映る。
私はその光景に釘付けられて、カーテンの間の僅かな隙間にしばらく顔を寄せていた。