心境

 今の私の状態はとにかく疲れ果てていて、それは論文の締め切りとかいろんな仕事とか勉強とかそういうもののせいももちろんあるけれど、4年も続いた関係を終わらせたことに起因するものもたぶんにあるだろう。今回は家の事情で帰省してきたけれど、そしてそんなにまったく時間的な余裕がなかったわけでもないけれど、誰にも会う気がせず誰にも連絡を取らなかったのは、誰かに会っていろんなことをしゃべってという元気がどうしてもなかったからだ。誰かと一緒にいるってことは、パワーをもらうこともあるけれど、それ以上に一緒にいるためのパワーがいる。今の私にはとりあえず息してご飯食べて寝るぐらいのパワーしかない。それぐらい疲れている。
 就職もせず、する気もなく、メインルートでない私のこれからについて説明するのも面倒で、長いこと付き合ってた彼氏と別れた経緯とかこれからどうするとかそんなことをいちいち説明することが面倒だ。もちろんそんなこと話さなくてもいいんだけど、でも誰かに会ったら話してしまうだろうから。

セックスより完全なものより。

 本当は彼と別れるのもすげえ面倒くさかった。一緒に住んで部屋にも街にも慣れていたし引越しなんて面倒くさいし何より彼に慣れていた。彼は一条の扱いに慣れていたし一条も彼の扱いに慣れていた。理解してほしいだの思わないけど何も説明しなくてもいい程度にはお互いがお互いの存在ややり方に慣れていた。

 こんなに楽ちんになったのにまた別の人を探して一から説明して理解し合うって言えば聞こえはいいけどまたお互いに慣らすみたいなそんなんなんて面倒すぎる。彼の洗濯物の干し方もシャツの畳み方も食事の好き嫌いも趣味も性癖も覚えたのにまた他の人と一から恋愛なんてと途方に暮れる。一緒にいて鼻歌を歌えるようになるまでにまたきっと何ヶ月もかかる。恋愛は面倒くさい。

 それでも恋愛してしまうのはどうしてなのか。私も高校生の時から4年も付き合って婚約までしていた彼と別れた経験があるけれど、あんなに大好きでそれこそもう運命の恋ぐらいに思っていたのにいつの間にやら上手くいかなくなって、もうこの人とはいいやって思って別れた時には(実際には振られたのだけど)「もう恋なんていいや」って思ってたしすっごい好きでもいつかは離れてしまうもんだなって思って、寂しくて切なくて心が痛かったけど、そんな痛みは時間が経つほどに薄れていって、また性懲りもなく人を好きになってすったもんだしながらも「もうこの人でしょう」みたいな、これからずっとこの人と一緒に生きてくのかななんて思ってたけど、そんな出会いも情熱も冷めてしまう時が来てってことを繰り返している。本当に懲りないなぁとかどうしようもないなぁとかいろいろ思うけど、とりあえず人って変わるから今この時から将来を予測するなんてできやしない。でも、将来の自分ももちろん大事だけど、今があってこその未来だから、今の自分が納得できないことを我慢して耐えて明るい未来が来るとはどうしても思えない。今はまだ(自分から振ったくせに)傷が疼くけど、それもいつかはいい思い出になるんだろうと期待して歩いていくしかない。
 そうは思っても、彼の荷物がなくなった後の部屋に帰るのは少し辛い。どうしようもないやつだなと自分を思うけど、たぶんそう思っちゃうだろう。もしかしたら泣くかもしれない。でもそれはただの感傷だ。たぶん、きっと。私たちが上手くいかなくなってしまったのは、私のせいもあるけど今の私は彼なしにはありえないのだから、私だけのせいでもない。と、必死で言い聞かせる。

 人生練れてないな、まだまだと思う。